ショットの破壊力

 テニスの魅力のひとつは、ショットの破壊力だ。野球では大谷の160km/hを超えるストレート、場外ホームランを生むスイングスピード、ゴルフでは300yを超えるタイガーウッズのドライバーショット、強烈なバックスピンのアイアンショット、バスケットボールのダンクシュートなどは、誰にでもできることではない。トッププロが放つ技の破壊力は、観るものに驚きと憧憬、ロマンを感じさせる。

 基礎技術の破壊力は、しばしばプレーのクラスを分ける。テニスの上級者は、下位プレーヤーのパワーショットを楽々と受け止める。しかし、上級者のパワーショットを下位プレーヤーが打ち返すのは難しい。両者が試合をすれば、下位プレーヤーは、技術や戦略を使う間もない。

 テニスはショットの強さを競うゲームではない。しかし、サーキットで軽自動車とフォーミュラーカーでレースを競うのも無意味だ。

 試合をする以上、最大の目的は勝つことだ。テニスがゲームである以上、互いに勝つことを目的に全力を尽くすから面白い。もし、技術や確実性で相手に劣ることを悟った時、勝つことを放棄するのは、アスリート失格だと思う。技術・確実性・体力などを比較して、自分が劣っていると悟ったとしても、勝つことを諦めて負けるためにプレーするのは正しいプレーの態度といえるだろうか?


【無理をしなければ勝てない相手に挑む】

 テニスには、色々な考え方がある。技術、戦術、戦略を競うインテリジェンスの戦いを好むか、それらを無視して強行突破するパワープレーを好むかはプレーヤーが選択すべきことだ。もし、技術や経験で勝てないと悟ったら、リスクを覚悟でポイントを奪うショットを選択すべきだ。成功確率が50%だったら、迷わずそれを選択すべき場面がある。成功確率が30%だったとしても、それを成功させなければ勝てないと悟ったら、アスリートならば全力でその30%に賭けるべきだ。

 しかし、30%の成功率であっても、それを全力、全身全霊で放つなら、成功率以上の結果につながることは多い。自分のレベルをブレークスルーして格上の相手に勝つには、そんなプレーに挑み続けなければならない。そして、試合でチャレンジしてこそ、その技は自分の技になると思う。


【練習でショットの破壊力を高める】

 体力・筋力の弱いプレーヤーが、破壊力のあるショットを打てないとは限らない。それらの裏付けがあれば、破壊力は高くなる。しかし、必ず破壊力のあるショットを打てるわけではない。

 常に自分の体力・筋力を最大に生かすようにショットを工夫することはできる。筋力にものを言わせて強いショットを打つということではない。体重移動、重心移動、運動連鎖、体幹、などを意識してショットするのは、力任せにボールを打つこととは違う。

 これらのことを学ぶと、他のプレーヤーのパワーロスが見えてくる。そして、必要な要素を加えると、相手が返球できない破壊力のあるショットを打ってしまうことがある。これが常態化すれば、レベルをステップアップすべき時が近い。

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