中級クラスの試合に勝つ鉄板戦術

 中級クラスの試合に勝つ(上級クラスにも共通技術)ために必要なことについて考える。

【ウィナーとエース、アンフォストエラー】

 中級クラスの試合は、ミスをしない方が勝つというアドバイスがある。アンフォーストエラーは、相手の攻撃によって失ったエラー(フォーストエラー)以外のミスである。これを減らせば確かに勝つ確率は高くなる。しかし、アンフォーストエラーが多い方が勝つこともある。

 絶対にアンフォーストエラーをしないプレーヤーが必ず勝つわけではない。攻撃力のあるプレイヤーがエースを取りまくる場合だ。具体に、前者はジョコビッチ、後者がナダルだ。

 中級レベルの試合では、エースで決まるポイントより、アンフォーストエラーによるポイントが多い。圧倒的な攻撃力で攻め切って勝つには、高い技術と圧倒的な体力が必要だからだ。攻撃できないラリーもあるので、ミスをしない方が勝つ、というセオリーが有効になる。

 プロでもエースが他のポイントより多いとは限らない。派手なエースがは目を惹き、記憶に残る。試合の流れを変え、プレーヤーのモチベーションを高める。しかし、淡々とミスをせず相手のミスを誘うプレーを徹底するのも、またテニスの戦術である。

【鉄板戦法】

1 深く緩いボール

2 緩く浅いスピンボール

3 浅いスライス

4 深く押し込むスライス


【1 深く緩いボール】

 深いボールはどんなレベルでも攻撃し難い。そこでスピンの効いたスピードボールを考えるが、それを中級レベルで安定して打ち続けるのは難しい。

 往年のアニメファンであれば「巨人の星」の大リーグボール3号を知っている。主人公が編み出した究極の魔球だ。ボールがバットを避けて当たらない。アニメ中では、水中に浮遊するボールは物体が近づくと水が動いて移動する、という原理だった。

 ナックルボールは、無回転のボールだ。物体は空気が速く流れる側に移動する。飛行機が浮力を得る理由だ。無回転のボールには常に変化する方向と逆向きの浮力がかかる。そこで一定方向に変化せず、ランダムに変化して飛ぶ。フォークボールは、無回転で縦方向に自由落下するので打者に近づくほど加速度的に落下する。

 適度にスピンがかかったボールを打ちなれているプレイヤーにとって、緩く回転しないボールを強打するのは難しい。当たり損ねのボールが思わぬ変化をするのと同じだ。中級レベルのラリーでは、この種のボールが多い。

 緩いボールを強打するのが難しい理由は、主に2つある。一つは、ショットは相手ボールのスピードを利用していることだ。ラケット性能の進化にしたがって、ボールを弾き返すのが容易になった。強打された相手ボールをブロックすれば同等のボールを返球できるので、先に打った方が体力を消耗する。テニスラケットは、ボールを面と直角の方向に弾き返す。つまりラケット面を返球したい方向に合わせてスイートスポットに当てれば、スイングしなくても力のある返球が可能なのだ。

 しかし、緩いボールは自分で力を加えなければ飛ばすことができない。面を目標に向けてスイングする要素が必要になる。威力あるボールを打ちたいなら、その分力を加えなければならないので、加減を誤るとオーバーミスのリスクが大きくなる。トップスピンをかけてコート内に収める要素を加えようとすれば、ボール軌道に対して斜めにスイングしなければならない。インパクトが線から点に近づく。そのため正確なスイング軌道とインパクにタイミングを合わせることが必要になる。

 このことに加えて、緩いボールは、下方向の動きが大きくなり、相手方向に打ち出すのが難しくなる。真上からボールを落下させて横方向に打つことを考えれば、ボールが落下する速度が増すほどインパクトが難しくなるのは容易に想像できる。ボールには下向きに重力加速度が働きくので頂点を過ぎるほど落下する速度が増す。速いボールは相手から時間的な余裕を奪うが、縦の変化が少ない。軌道を予測して面を作ってしまえば、ラケットを動かさなくても勝手にボールが飛んできて飛んでいく。しかし、緩いボールは、積極的に頂点を狙ってポジショニングしなければ、縦の変化が大きい。これらの理由で、緩いボールを強く(速く)打つのは難しいのだ。

【2 低く浅いスピンボール】

 浅いボールは、高い打点で打てば、チャンスボールになる。しかし初動が遅れるほど打点が低くなり、強打することが難しくなる。ドロップボールは典型だ。更にスピンのかかったボールはバウンド後に変化するので難易度が高い。緩く深いボールでラリーが膠着した場合、このボールで相手を揺さぶることも有効だ。

【3 浅いスライス】

 スライスの利点は、高くバウンドしないことだ。つまり相手の打点を低くさせる。ネット側にドロップを打ち、相手の打点が低ければ、ドロップを打ち返すか、緩い山なりのボールを打つなど、ショットの選択肢が狭くなる。

 それは、浅いスライスにも共通だ。相手の初動が遅れれば、コート内の低い打点でインパクトすることになる。センターに打てば、相手は厳しいアングルを狙うのが難しい。コート内に入った相手が後ろに戻ろうとすれば、相手を崩したことになる。つまり、ドロップショットは相手の動きの逆をつくショットになり、深いボールを打てば、相手が下がりながら打つことで甘い返球になる確率が高い。

【4 深く押し込むスライス】

 深く押し込むスライスは、それだけで相手のプレッシャーになる。打点が低くなるだけでなく、バックスピンがかかっているので、ボールを持ち上げなければならないので、相手のネットミスを誘うことができる。特に、相手が腰高のプレーヤーなら、強いショットを打たれる確率が低い。スライスを打ち返すか、面を上向にして打ち上げることが多い。


【確実にとどめを刺す】

 これらは、どれもノータッチエースを狙うショットではない。相手のミスを誘い、甘い返球を誘うのが目的だ。そのため、打ち続ければ慣れて対応される。そこで、甘いボールを確実にポイントすることが肝要だ。ミスショットの多くは、浅い打ち損ねのボールになる。これを見逃さず、確実にとどめを指すことで、強いプレッシャーになる。

 4つの技(一の矢)が上手く決まったら、コート内に入って、二の矢を打つ準備をする。4つの技を緩く返球するのは難しくない。そこで、二の矢を放つ。これは、ネットに詰めてボレーやスマッシュで決めるということではない。リスクは少ないイージーボールなら、ここでトドメを刺す。そうでなければ、コート内で相手を追い込む。

 相手のミスを誘い、失点させるポイントを積み重ねることが勝利に繋がる。浅いがウィナーを打つにはリスクが高い技を二の矢と考えてはいけない。

【二の矢の技】

1 オープンスペースを狙って相手を走らせる

2 相手の動きを止めて難しいショットを強いる

3 相手の苦手サイドで打たせる。

 コート内に入ったら、必ずしもボレーをしなくても良い。いきなりサービスライン付近まで詰める必要はない。打点を下げないことが大切だ。高い打点で打たれたボールはそれだけで攻撃的だ。

 まずオープンスペースを狙う。左右だけでなく前後を考える。十分に時間の余裕があれば、サービスライン付近で、アングルやドロップを狙う。その場合は、ポイントすることが望ましい。相手が届いて返球した場合、こちらはボレーで対応するしかないので、苦手なコースに打たれて逆転する可能性があるからだ。

 相手がコート内のデッドゾーンにいれば、深いボールで足元を狙っても良い。相手が浅いボールでコート内に入り、そのまま動かない場合だ。さサービスラインとエンドラインの中間、いわゆるデッドゾーンは、多くのショットが打ちにくく失点しやすいポジションだ。ここでオープンコートを狙えば、甘くなると相手に攻撃のチャンスを与える。しかし、厳しいコースを狙ってミスすれば、二の矢の意味がない。

 足を止めて打つ低い打点のショットは難しい。足元に迫ってくるボールに踏み込むことができなければ、面を合わせて手打ちで処理するしかない。これでボールコントロールするのは難しいので、ミスになるか更に甘いショットをさせることができる。

 相手の苦手サイドを狙うのは、常に有効だ。特に中級クラスではバックハンドを苦手にしているプレイヤーが多いので、多少甘いボールでも、相手にウィナーを狙われる可能性が低い。

【三の矢-とどめを刺す】

 甘いボールを決め切れす、3往復すると逆転する可能性が高くなる。三の矢はとどめの技でなければならない。ノータッチエースを狙うか、相手が返球できない技だ。技の種類は二の矢と同様だ。しかし、内容が違う。ボレーで決めるなら、よりネットに詰めて、アングルや強いボールでオープンコートを狙う。相手に触らせないことがぜんていだ。

 二の矢が甘く、挽回されそうな場合は、ポジションを下げてウィナーショットを狙う。二の矢である程度相手を崩していれば、隙がある。そこを十分な体勢で攻めるためにニュートラルポジションに下がる。相手はポジションを崩されてオープンコートを作っていると自覚しているので、一か八か逆転のショットを狙う可能性がある。中途半端なポジションにいれば、それを食うスペースも多い。しかし、ポジションを戻せば、相手も無理にウィナーを狙わないので、とりあえず返球するボールを打つ可能性が高い。しかし、ポジションは崩されているので、打球後、ニュートラルポジションに戻ろうとする。そこでストロークで逆をつくことができる。崩されてそのまま動かない場合は、オープンコートにウィナーを狙う。


【まとめ】

 一撃でポイントを取れる技術があれば、そのプレーヤーは既に中級レベルではない。それで勝ちきれないから中級レベルなのだ。また、ネットに詰めてボレーに一撃でトドメを刺せる、ロブが来たら確実にオープンコートにスマッシュを決められるなら、それも中級レベルではない。

 つまり、その気になれば、確実に一撃で決められる技を持たず、相手の甘いボールを確実にボレーやスマッシュで仕留められないから中級レベルなのだ。上級を目指してそれらができるようになろうと向上心を持つことは大切だ。しかし、現在それができないなら、試合に勝つための戦術や戦略が必要だ。

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